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分析機器の高感度化、高精度化にはめざましいものがあり、今や計測機器そのものの信頼性よりも試験環境や分析法の堅牢性などが計測結果を左右する大きな因子であると言われています。一方、多くの測定機器は対象成分毎に校正が必要であり、この校正に用いる標準物質の信頼性確保も併せて重要な問題であると考えられます。例えば機器校正に用いる標準ガスや標準液等の濃度標準において、その濃度信頼性は主成分と希釈ガス(液)の精確な混合並びにそれぞれの純度に依存します。しかし、特に主成分純度を精確に規定するのは容易でないことから、既に供給されている標準物質においても必ずしも十分な水準で純度が確定されているとは言えない状況です。
図1 純度測定用断熱型熱量計 当研究所では平成8年度より、有機標準ガスおよび標準液などの濃度標準の主成分として用いる高純度有機物質の開発を進めてきました。これらの物質を標準物質として供給するためには、国際単位系に直接つながり、測定される量の標準を参照せずに絶対測定が可能である分析法(一次標準測定法又は基準分析法)で純度値が付与されていることが重要となります。凝固点降下法はCCQM(国際度量衡局下の物質量諮問委員会)において一次標準測定法としての資格を有する測定法として規定されており、特異性の少ない有機化合物の純度測定には有用性が高いと考えられます。そこで、開発を行う高純度物質について本法の適用可能性を検討したところ、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter : DSC)を用い擬似的に熱平衡状態を保ちながら試料を融解させる段階的加熱法による純度測定法を確立することができました1)。加えて不純物も可能な限り少ない標準物質をめざし高純度化についても検討を重ね、これまでに、エタノール、1,2-ジクロロエタン標準物質を開発するに至りました。さらに、平成12年度には完全な熱平衡状態下で高精度測定が可能な断熱型熱量計(図1)を新たに導入したことで、DSCでは温度分解能の限界から測定が困難であった超高純度物質の測定が可能となり、純度99.984±0.013 %のトルエン標準物質を開発することができました。これらの高純度標準物質は当所初の認証標準物質(Certified Reference Material : CRM)として、主に標準供給機関を対象に供給される予定になっており(図2)、今後、ベンゼン、コレステロールなどについても同様の技術により順次CRM化を行う予定です。
図2 物質研認証標準物質(開発中の物質を含む)
一方、高純度有機物質の中には容易に凝固しないものも少なくありません。近年、外因性内分泌攪乱化学物質いわゆる環境ホルモンとして問題となっているフタル酸エステルもそのような物質のひとつです。当所ではこれら物質の環境計測における精度向上を目的に、平成11年度よりフタル酸エステル標準物質の開発を開始しています。現在、フタル酸ジエチルについては断熱型熱量計を用いた純度測定法を検討中ですが、他のエステルについては凝固点降下法の適用が容易ではないことから、類似構造であることを生かした新たな純度測測定法を開発しました2)。
1) 井原俊英, 野村 明, 物質研ニュース, No.36 (1999)
図3 LC-NMRによるフタル酸エステルの測定例 |