1.はじめに
カーボンナノチューブは、熱伝導性、電気伝導性、機械的強度などで従来の物質にない優れた特性を持つことが確認され、次世代壁掛けテレビの電子源材料、Li電池の負極剤等の電池材料、水素等のガス貯蔵材料、複合樹脂材料まで幅広い用途への応用の可能性をもっていることから、21世紀の産業を支える重要な物質になると期待されています。
カーボンナノチューブの合成方法には、アーク放電法、Laser-ablation法、プラズマ合成法、炭化水素触媒分解法があり、アーク放電法並びにLaser-ablation法で合成されたカーボンナノチューブが市販されています。しかし、いずれもg当たり数万円の価格であり、研究室レベルで使用することはできても、工業レベルで使用する事は出来ません。それ故、カーボンナノチューブを工業材料として実用化を進める上で、最大の課題が低コストで大量供給が可能な合成技術の確立です。
2.超微粒子触媒を用いた化学合成法の開発
筆者らは、平成10年度より開始された通産省の産業科学技術研究開発プロジェクト「炭素系高機能材料技術」(フロンティアカーボンテクノロジー)において、昭和電工(株)とカーボンナノチューブの大量合成技術の開発を進めていたが、昨年度前半まで
の研究において、炭化水素と触媒を気相で1000℃以上の温度で反応させ、高効率で多層カーボンナノチューブが生成する事を確認した。本方法は化学的プロセスによる合成方法で、スケールアップが容易で、原料に炭化水素等を使うことから、コストも安い特徴を有している。また、冷陰極電子源としての性能が良好であることが確認された。
この成果を受けて、一昨年10月より、物質研と昭和電工は、大型連続式反応試験装置の設計・製作に着手し、昨年度末には、試験設備による1時間当たり200gのカーボンナノチューブの合成を確認し、昨年5月の後処理行程の完成により、カーボンナノチューブ合成装置の全設備が完成し本格的に量産の可能性を実証する事となった。本連続式生産技術が確立されれば、1日当たりの生産量が数kgから数百kgの量のカーボンナノチューブの生産への見通しが得られるものと期待される。これにより、近い将来のカーボンナノチューブの応用の開発の上で最大の問題であった供給の問題が解決し、カーボンナノチューブの産業界における実用化を大いに促進するものと期待される。
3.終わりに
フロンティアカーボンテクノロジープロジェクトでは量産技術の確立を受けて、カーボンナノチューブの試験供給を既に開始し、電子放出材料、水素吸蔵材料、電池材料、機械的応用等、工業材料としての可能性を検討しながら、プロセス開発を進めていく予定である。
図1 超微粒子触媒を用いた化学合成法によるカーボンナノチューブ合成
図2 超微粒子触媒を用いた化学合成法による大型連続式反応試験装置
(昭和電工(株)生産技術センター内)