National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST) This page is a page of the former research institute. We stopped updating on March 31.2001.
E-mail to webmaster (Japanese) E-mail to webmaster (English)

「サファイア上に蒸着した白金薄膜上のダイヤモンド融合膜成長に成功」


(財)日本ファインセラミックスセンター         
フロンティアカーポンテクノロジー・プロジェクト


to English

 1.背景

 気相合成ダイヤモンド薄膜は、その硬度や透過性を活かして、既に切削工具コーティングや光学窓に実用されており、現在は高周波通信用の表面弾性波フィルターや半導体微細加工用のフォトマスクヘの応用が始まろうとしている。
しかし、より市場規模の大きいエレクトロニクス分野での応用を実現するためには、製造コストを低減した形で大型の単結晶ダイヤモンド薄膜成長技術を確立する必要がある。(ダイヤモンドの産業用途については、表五参照。) 
 単結晶ダイヤモンドの人工合成法としては、高温高圧法が知られているが、結晶サイズは通常、数mm以下である。電子素子・集積回路作製のためには、少なくとも1インチ(25mm)径以上のウエハ化することが求められており、広域化に適した気相合成法により、ダイヤモンド以外の基板上に単結晶ダイヤモンド膜を形成する技術が模索されているが、実現には至っていない。
 NEDO産業基盤技術プロジェクト「フロンティアカーボンテクノロジー (FCT) 」において、物質工学工業技術研究所は (財) ファインセラミックスセンターと共同研究を行っているが、(財) ファインセラミックスセンターはプロジェクト参加メンバーである(株)神戸製鋼所・技術開発本部・電子技術研究所に研究委託して、単結晶ダイヤモンド薄膜気相合成技術の開発を進めている。

2.成果の概要説明

 今回は、表面を鏡面研磨したサファイアを基板とし、まず、白金単結晶薄膜を、スパッタ法により蒸着形成した。白金の結晶性をX線回折ロッキングカーブ法で評価したところ、(111) 回折のピーク半値幅が O.16℃ と小さいことが判明し、従来用いられてきたバルク状白金に比べて格段に優れた結晶性を有することが確認された。
 さらに、これを基板としてダイヤモンドの気相合成を行い、図1に示す断面構造を有する試料を作製した(各層の結晶方位、厚さも図2に合わせて示す)。その結果、隣接したダイヤモンドの結晶面が融合したダイヤモンド薄膜(ダイヤモンド融合膜)が成長することが見出された。図2は得られたダイヤモンド融合膜の表面形態を走査型電子顕微鏡で観察した結果である。方位整合したダイヤモンド (111) 結晶面が試料表面を覆い、結晶面同士の融合度の進展も顕著である。ダイヤモンド膜のX線回折ロッキングカーブ半値幅も 2.0℃ 以下であり、これまでより配向度に優れた結晶であることが確認できた。

3.成果のメリット

 バルク状の白金単結晶を基板としてダイヤモンド融合膜が成長することはすでに知られていたが、基板が高価な上に、サイズもせいぜい 10mm 径であり、成膜面積に限界があった。
 一方、今回基板として用いた人工サファイアは、より安価で、8インチ (150mm) 径までの高品質単結晶ウエハが市販されており、今回の成功により、ダイヤモンド融合膜の広域面積化に、原理的な制限がなくなったことになる。

4.将来展望

 現状のダイヤモンド融合膜中には低密度ながら結晶粒界が存在し、単結晶化には至っていないが、今後のプロセス改善により結晶粒界の撲滅・単結晶膜化を目指す。
 また、今回は装置上の制約のため、小型基板 (10mm角) で実験を行ったが、将来的には合成装置の大型化によりダイヤモンド膜の広域化、ウエハ化へと発展させることが可能である。

5.期待される応用分野・波及効果

 今回の技術確立により、より高付加価値で市場規模の大きい電子素子(例えば、紫外線発光・受光素子、整流ダイオード、高耐圧・高集積・高周波対応型トランジスタ、その他の放射線・熱・歪み・バイオ等各種センサ)への適用へ向けた動きが加速すると期待される。


表1 ダイヤモンド薄膜の産業用途

機 能
利用分野用いたダイヤモンドの特性産業へのインパクト
高温半導体・自動車、航空機タービンなど産業機械制御
・家電製品制御
・耐熱性・10℃以上の高温環境で信頼性の高い制御
・家電製品のコンパクト化
高周波・高パワー用半導体・マイクロ波無線LAN(交通制御、オフィス内通信、多重TV送信など)
・高速データ通信
・非接触式入場計測
・高耐電圧
・高キャリア移動度
・マルチメディア時代の高速、大量デタ通信(動画送信、遠隔医療用通信)
・交通、入場などの効率化
高耐圧半導体・電力制御用・高耐電圧・設備のコンパクト化
電子放出・平面パネルディスプレー
・高速トランジスタ
・高感度磁気センサ
・電子放出
・耐熱性
・化学的不活性
・低消費電力の表示パネル
・GHz帯のマイクロ波増幅(高速通信用)
発 光・青色から紫外領域の発光、レーザ
・白色発光
・プリンタ用光源
・大バンドギャップ・大容量光記録・通信、医療用光源
・大型ディスプレー
・プリンタの超小型化
放射線検出・デジタルX線画像記録
・原子炉制御(異常事態の早期発見)
・耐放射線・X線医療の高度化
・原子力発電の安全維持
光 検 出・火炎(紫外線)検知
・紫外線モニタ
・大バンドギャップ・災害の早期発見
・地球環境計測
歪み・圧力検出・高感度の歪み、圧力センサ
・耐熱性歪み、圧力センサ
・高ピエゾ抵抗率
・耐熱性
・産業設備用高感度検知
温度検出・高感度、耐放射線温度センサ・耐熱性・自動車の最適燃焼制御による排ガス低減
・原子炉設備の安全維持
磁場検出・自動車、航空機、タービンなど産業機械の回転検出・耐熱性・回転機の最適制御、異常事態の早期発見
X線用窓・X線フォトリソグラフィー用マスク・高熱伝導率・サブミクロンLSIの製造
熱 拡 散・ヒートシンク・高熱伝導率・マイクロ波モジュールの信頼性向上
表面波応用・高周波フィルター、信号遅延素子・高弾性率・pZ帯の移動体通信


説明図:サファイア上に蒸着した白金薄膜上のダイヤモンド融合研膜

picture-1-1

図1 試料の断面構造

picture-1-2

図2 ダイヤモンド融合膜表面の電子顕微鏡写真


戻る