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大きさが数ナノメートル(1ナノメートノレは10-9メートノレ)の金属微粒子は,十数個の原子の集団であり,金属クラスターと呼ばれ,巨視的状態とは異なる電気,光学的性質や触媒作用を示すことが知られている。しかし,極微小な粒子を安定に保持することは難しいため,種々な媒体中に分散・安定化させる研究が行われている。また,金属クラスターを媒体中に規則正しく配列させる技術は,ディバイス化に際し重要な技術となると考えられている。
我々は,溶剤を用いない簡便なドライプロセスにより,金属クラスターを高分子中にナノスケールで配列させる方法を見いだした。図1に本手法を示す。ガラスチューブの底に10mg程度のパラジウム(U)ビスアセチルアセトナート(Pd(U)を仕込み、チューブ内部を減圧化し, 底面のみを180℃の油浴に浸ける。Pd(U)AAは昇華し、チューブ上部で冷却され,再ぴガラス壁面に濃縮される。この中に,ポリマーフィルムを入れ,窒素雰囲気下において,180℃の油浴中にガラスチューブを浸漬すると,昇華したPd(U)AA蒸気は,ポリマー中に浸透し,同時に,熱分解,還元され,Pd金属となり,ポリマー中に安定に分散する。 本手法を,ミクロドメイン構造を有するブロックコポリマーに適用すると,図2に示すように,平均粒径3.5oのPdクラスターが規則正しく配列することが明らかになった。図2はポリスチレン(PS)とポリメチルメタクリレート(PMMA)のジブロヅクコポリマーに本手法を適用し,フィルム断面を透過型電子顕微鏡で観察したものである。ブロックコポリマーは,互いに非相容なポリマーを化学結合により連結した高分子であり,同一ポリマー鎖同士が集合し,ナノスケールの相分離構造を有する。また,相分離構造の周期及びパターンは,ブロック鎖の長さ,比により一義的に決まる。用いたジブロヅクコポリマーは各ブロックの分子量が共に約7万と対称であるため,PS相とPMMA相が交互に積層するラメラ構造となる。このような,Pdクラスターの規則配列が得られる理由は,ポリマー中に浸透したPd(U)AAの,熱分解・還元反応がPS内部で速く進み,PdクラスターがPSドメイン内部で選択的に成長するためと考えている。PMMAのPd(U)AAに対する還元カが,PSに比べ遅い理由は明らかでないが,PMMA側鎖のカルボニル基とPd(U)イオンの相互作用により安定化されるためではないかと推測している。また,ポリマー中でのPd(U)AAからのクラスター成長は,Pd(U)AAバルクの熱分解よりも極めて速く,ポリマー自身が触媒作用を有していると考えられるが,そのメカニズムは明らかでない。
本手法には,以下に挙げるような利点が考えられる。
2.ブロックコポリマーの構成ポリマー間に金属錯対に対する還元カに差があれば適用可能であり,幅広いポリマーに金属クラスターを導入することが可能である。 3.ブロックコポリマーは,構成ポリマーの分子鎖長比によりスフェア,シリンダー,ラメラなどのナノスケールの規則構造パターンを作りだせるため,金属クラスターをこれらのパターンに配列させることが可能である。 4.金属錯対の中心金属を変えれば,他の金属を導入できると期待される。 |
図2 ブロックコポリマー中に形成されたPdクラスターのナノ配列