National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST) This page is a page of the former research institute. We stopped updating on March 31.2001.
E-mail to webmaster (Japanese) E-mail to webmaster (English)

超臨界水によるイオン交換樹脂の完全分解

化学システム部 佐藤 眞士,佐古  猛
(株)東芝 原子力研究所 山田 和矢


 火力発電所や原子力発電所で大量に発生し、現在は産業廃棄物として埋設処分したり発電所内に保管している使用済のイオン交換樹脂を、温度400℃、圧力30MPaの超臨界状態の水を用いて、二酸化炭素と水と硫酸にほぼ完全に分解しました。今後、最適な反応器および樹脂供給方法、酸化剤注入方法などを含む処理システムを開発し実用化をめざします。本技術の特徴は、閉鎖系での処理のため排出物による環境汚染の恐れがないことです。実用化すれば廃棄物の大幅な減容が期待できます。

1.背景
 火力発電所や原子力発電所では、機器の腐食防止のため、系統水の浄化や系統に注入する水の浄化に大量のイオン交換樹脂が使用されています。これらのイオン交換樹脂は性能が経年劣化するため、所定期間使用した後、廃棄物となります。使用済のイオン交換樹脂は、火力発電所では産業廃棄物として埋設処理され、原子力発電所では放射能レベルにより分別され、それぞれ貯蔵タンクに水とともに貯留されています。イオン交換樹脂は自然状態では安定で難分解性です。しかし、有機物質なので長期的には変質する可能性があります。廃棄物として処分することを考えると、無機化し安定化する必要があります。使用済のイオン交換樹脂の処理方法として、焼却処理、熱分解処理、酸化分解処理など様々な無機化減容技術が、特に原子力発電所で発生するものを対象に開発されました。現在、一部の原子力発電所では、放射能レベルが低いものについて、焼却処理を行っています。一方、放射能レベルが中程度のものは、どの発電所においても貯蔵タンクに貯留されています。

2.イオン交換樹脂の分解機構
 発電所で使用されているイオン交換樹脂のうち、陽イオン交換樹脂の分解機構を図1に示します。熱をかけると、150〜180℃でまず交換基が脱落し、続いて共重合体母体の分解が起こります。酸化剤を共存させることにより、酸化が促進され、理想的には、二酸化炭素と水と硫酸に完全分解されます。

3.分解実験
(1)イオン交換樹脂、水、酸化剤(過酸化水素あるいは酸素ガス)を反応器に充填し、溶融塩浴で400℃まで加熱します。
(2)水は臨界温度の374℃以上に加熱されて超臨界状態になります。反応圧力は反応器に充填した水の質量によりコントロールされて臨界圧力(22MPa)以上の約30MPaになるようにします。
(3)所定の反応時間の経過後、反応器を急冷して反応を止めます。その後、反応器中の水と残存固形分の同定と組成分析をして分解率を求めます。
(4)反応温度400℃、反応圧力30MPaにおいて、超臨界水+酸化剤による陽イオン交換樹脂の分解実験の結果を図2に示します。超臨界水+酸化剤の条件では反応時間5分で94%、30分で99%以上が分解されます。超臨界水を使わない条件では触媒を用いても反応時間60分で分解率92%、80分で94%です。

4.従来の分解技術との比較
(1)従来技術
 現在までに研究開発された代表的なイオン交換樹脂の分解・無機化技術として、@助燃剤または可燃性雑固体と混合して焼却。A低酸素雰囲気で加熱することにより熱分解。B硝酸、過酸化水素、酸素を酸化剤とし、硫酸−硝酸系、硫酸−過酸化水素系、水−過酸化水素系などで鉄イオン、銅イオンなどを触媒とした酸化分解。CAg2+の酸化力を用いた電解酸化分解。があります。@の焼却法は、原子力発電所には可燃性雑固体の焼却設備が既にあることから、一部の発電所では採用されています。しかし排気ガスとしてイオン交換基に起因するSOxやNOxが発生します。Aの熱分解処理法は、炭素が残るため残渣量が比較的多くなります。Bの酸化分解法は、反応速度が遅く、また触媒が必要なため二次廃棄物が発生します。Cの電解酸化法では、Ag2+の維持に課題があり、それほど高い分解率は得られていません。
(2)超臨界水分解法の特徴
 超臨界水に酸化剤を加えた反応溶媒を用いてイオン交換樹脂を分解すると、従来技術に対して次のような利点があります。@分解試薬の超臨界水および酸化剤は環境への悪影響がない物質です。A超臨界水は高い反応活性を持つ分解試薬であり、従来法よりもかなり短時間で完全分解可能。残渣が残りません。B閉鎖系内で分解処理が可能なため、排ガスなど排出物の環境汚染の恐れがありません。

5.今後の計画
 今後、@最適な反応器構造、A反応器への廃棄物供給方法、酸化剤注入方法などを含む全体システム、Bスケールアップの研究・開発を行い、実際の廃棄物処理を検討する計画です。

  図1 陽イオン交換樹脂の分解反応機構

  図2 陽イオン交換樹脂の分解試験結果


戻る