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ポリカーボナートの新しい合成法


−有毒な原料を用いないプラスチックの新しい合成法−

高分子化学部 浅井 道彦,上田 充,竹内 和彦,杉山 順一,長畑 律子
(財)化学技術戦略推進機構 Meenakshi Goyal,石井 宏寿


 芳香族ポリカーボナート(PC)は、耐熱性、耐老化性、耐衝撃に優れた透明な難燃性熱可塑性プラスチックで、金属に代わる材料として広く使われている。(身近にはコンパクトディスクや自動車用ヘッドライトレンズなどに使われている。)PCは、現在、有毒ガスとして知られるホスゲンとビスフェノールAを縮合するホスゲン法(式1(a))あるいはジフェニルカーボナート(DPC)とビスフェノールAを250℃以上の高温で反応させるエステル交換法(式1(b))によって製造されている。ホスゲン法では有毒なホスゲンを用いねばならず、また生成ポリマー中に塩分が残ってしまうこと、エステル交換法ではDPCの製造効率が低いなど、これらの製法にはいずれも欠点があり、新しい製造プロセスの開発が急務とされている。
 この代替プロセスとして、ホスゲンの代わりに一酸化炭素を使用する酸化的カルボニル化法が期待されている。すなわち、ビスフェノールAを一酸化炭素及び酸素(触媒再生用)の混合気体中で反応させて合成する方法(式1(c))で、高活性・高選択性触媒の開発が新プロセス実現のキーポイントである。触媒としては、貴金属のパラジウム(Pd)を主成分とするものが高活性とされており、これに種々の添加成分を加え、触媒の活性・選択性を向上させる試みが世界各国で行われてきたが、これまでの所いずれも反応成績はモデル反応(フェノールからのDPCの合成)でも10%以下と低く、実用化にはほど遠いものであった。
 物質研では、工業技術院産業科学技術研究開発「独創的高機能材料創製技術−精密縮合重合」の研究開発の中で、この新しいPC製造法の開発を進め、最近、パラジウム金属を主成分とする高活性・高選択的な複合系触媒を見いだした。これまでに見いだした触媒は、一酸化炭素を活性化し、ビスフェノールと反応させるパラジウム化合物(塩化パラジウムなど)、パラジウム触媒を活性化する無機レドックス剤(酢酸銅または酢酸セリウムなど)と有機レドックス剤(ハイドロキノンなど)、ビスフェノールを活性化する有機塩基(4級アルキルアンモニウム塩など)、反応中に生成する水分を除去する脱水剤(モレキュラーシーブなど)から成る複合系触媒で、少量の酸素存在下でビスフェノールAと一酸化炭素を反応させポリマーを合成する。
 まず、モデル反応(式2)として検討したフェノールからのDPCの合成で76%(Pdターンオーバー数250)の高い収率を得ることができた。当初、極少量の副生物の生成が見られたが、レドックス剤や有機塩基などの種類や添加量を制御し、反応条件を最適化することによってほぼ100%の選択率を達成できた。次いでここで得られた最適な触媒及び反応条件を用いてビスフェノールAの重合を行ったところ分子量3,000〜5,000のPCを80%以上の高い収率で得ることに成功した。さらに、ここで得られた両末端にOH基を有するポリマー(式3(d))を原料として、もう一度同じ条件で再度反応したり、あるいはこの分子量約5,000のポリマーと230℃でエステル交換することにより2.2万〜3.3万の実用化レベルの分子量を持つポリマーを合成することに成功した。
 物質研では、この製法を実用化をめざし、引き続きポリマーの分子量向上や触媒の活性向上、触媒再生法などについて検討を行う予定である。


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