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光照射量に依存して色変化し可逆的に色固定される物質


− 光モードの書き換え可能フルカラー記録 −

物質工学工業技術研究所 高分子化学部
玉置 信之
宋  小英
守山 雅也
松田 宏雄


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(概 要)

 アゾベンゼン誘導体と中分子コレステリック液晶の組み合わせを用いることで、紫外線の照射量により赤から緑を経由して青に変化し、各色を可逆的に固定できる材料を開発した。色の記録は材料をその液晶温度である87度Cに保って行う。一定の照射により材料が望みの色を呈し、その後の急冷操作でその色が固定される。固定された後は、紫外線や可視光の照射に対して色は安定である。130度C以上までの加熱によりすべての色は消失し書き込みが可能となる。適当な透過率を有するマスクを介して紫外線照射することでフルカラーの絵や文字を記録することが可能である。本現象はアゾベンゼン誘導体の可逆的な光反応が、可逆的な固定が可能なコレステリック液晶の螺旋状分子配列に影響を与え、その結果液晶の選択反射が起こる光の波長が変わったと説明される。

(背 景)

 コンピュータ用のプリンターやコピー機の発達のためにオフィスや家庭で大量の紙が消費され、大きな環境問題になっている。もし、書き換え可能なイメージング材料が開発され、それを書き換え可能な紙すなわちリライタブルペーパーへ応用できれば、紙はそのままリサイクルされ、大量の紙の消費が原因になっている森林破壊やゴミ問題が解決に向かうと考えられる。これらの用途に用いるリライタブル材料としては、白黒の情報のみならずフルカラーのイメージを再現できることは理想的だが、これまで電源などが必要なく自由に書き換えられるフルカラー記録材料は存在しなかった。

(コレステリック液晶)

 本研究ではコレステリック液晶性化合物を材料として用いている。コレステリック液晶性化合物は液晶状態で干渉色を示す。この色はらせん状の周期構造を有する分子配列による反射光に基づくものである(図1参照)。らせん周期=Pの分子配列を有している場合、らせん軸に平行に入射された光のうち波長λ=nP(ここでnは液晶の平均屈折率)を中心とした波長幅Δλ=PΔn(Δn=屈折率の異方性)の光のみが選択的に反射され、その他の波長域の光は透過する。コレステリック液晶のラセン周期は温度や不純物の添加によって変化するため、反射する光の波長も可視域の全波長域にわたって変化させることが可能である。従って、分子の描くラセン周期を何らかの方法でコントロールし、かつ可逆的に固定できれば、単一分子もしくは単一組成物であらゆる色を呈するフルカラー書き換え記録に応用することが可能である。我々はすでに高温下での温度コントロールで反射色を必要な時に素早く変化させ、かつ急冷操作で任意の反射色に固定できる中分子量程度(分子量が1000程度)のコレステリック液晶を見いだし、熱モードの書き換え可能フルカラー記録材料への応用を提案している。

(コレステリック液晶色の光制御)

 一方で、Sackmannは、1970年代にコレステリック液晶の反射色がその中に溶解したアゾベンゼン等の光異性化反応で可逆的に制御されることを報告している。アゾベンゼンは紫外線照射でtrans体からcis体へ、440nm付近の可視光でcis体からtrans体への異性化反応を起こす。trans-アゾベンゼンとcis-アゾベンゼンでは化学的性質が異なるため、コレステリックピッチに対する不純物としての効果に差異が生じる。従って、紫外線照射量を変化させることでコレステリック反射色を連続的に制御することが可能となった。

(中分子コレステリック液晶の反射色の光制御と固定)

 我々は、中分子液晶を用いることで液晶の反射色の光制御と一時的な固定が可能になるのではないかと考え、アゾベンゼン等のフォトクロミック化合物と上記の中分子量程度のコレステリック液晶を組み合わせについて検討した。その結果、光モードの書き換え可能フルカラー記録材料が可能であること、一旦急冷操作で色固定した後は室温付近の温度変化や光照射によって色変化がないことを見いだした。以下に結果の概略を示す。1にアゾベンゼン誘導体21または2wt%添加した混合物を2枚のガラス板間で溶融後、液晶温度に保ち、厚さ約10μmの薄膜を作成した。90℃付近の液晶温度に保たれた試料に紫外線を照射したところ2が部分的にtrans体からcis体へと変化し、それに伴って赤から緑を経て青へと変化した。その状態から0℃へ急冷したところコレステリック色を保ったまま固化した。紫外線照射量の増加に伴い、急冷後の固体膜では紫外域のピークが減少し可視域のピークは短波長シフトした。また、液晶温度ではアゾベンゼンの光異性化に伴いコレステリック液晶のラセンピッチが減少するのに対し、一旦液晶が固化した状態では光反応で生成したcis-2が熱的にtrans-2に異性化するだけで、2の異性化反応に対してコレステリック反射バンドは全く影響を受けないことが判明した。同様に固定化後は2の光反応に対してもコレステリック液晶のラセンピッチは全く影響を受けなかった。すなわち、コレステリック液晶温度である90℃程度ではフォトクロミック化合物とコレステリック液晶間のコミュニケーションのゲートがオープンになり、急冷後の室温下ではそのゲートが閉じていることになる。さらに、130℃まで昇温することで2の構造と液晶の分子配列が初期化された。

(記録特性)

 1と2の組み合わせからなる薄膜では照射する紫外線量を制御することで、赤、緑、青等、可視域のあらゆる色を固定することが可能であった(図2参照)。また、マスクを介して紫外線を照射し、その後急冷することで様々な色からなる文字や絵を記録することができた。その際、20ミクロン以下の細かい部分を解像することができた。一旦記録した情報は130℃以上に昇温することで消去でき、繰り返し情報を書き込むことが可能であった。



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